オラクルの強さを解剖:クラウド競争力と買収戦略で描く次の成長曲線

ORACLE 企業解説

1. イントロダクション:Oracleとは何か

Oracle(オラクル)は、1977年6月16日にアメリカ・カリフォルニア州サンタクララで、ラリー・エリソン(Larry Ellison)、ボブ・マイナー、エド・オーツによって創業されました。「Software Development Laboratories」が前身であり、現在はアメリカ・テキサス州オースティンを本社とする大手IT企業です 。

Oracleはその名を冠したリレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)が特に有名で、商業データベースとして早期に普及しました 。

また、クラウド・サービス(IaaS、PaaS、SaaSなど)や、ERP・CRMなどのアプリケーションソフトウェア、サーバーやミドルウェアなど幅広い製品を提供し、世界中の大企業・政府機関などに採用されています 。


2. 沿革と企業概要

  • 創業と歴史の歩み
    1977年創業以来、「Oracle Database」により、航空・通信・製造業など多数の業界で大量データ処理を可能にし、最初の顧客が米空軍やCIAだったという驚くべき歴史もあります 。
  • 本社移転と現在の地位
    元々シリコンバレー(カリフォルニア州レッドウッドショアーズ)に本拠を構えていましたが、2020年以降はテキサス州オースティンに本社を移し、世界的なシステムプロバイダーとして拡大を続けています。
  • 規模・地位
    2025年時点で、Oracleは市場価値約6,623億ドルを誇る世界第4位のソフトウェア企業であり、フォーブスのグローバル2000では世界80位にランクされています 。

3. 主力製品・サービス

3.1 Oracle Database

Oracle Databaseは、世界中の企業に使われるRDBMSで、多機能性・拡張性・セキュリティに優れ、大規模データ管理の中核です 。

3.2 Oracle Cloud

Oracle Cloudは、IaaS・PaaS・SaaS・DaaSを含む包括的なクラウドサービスで、オープンスタンダードやオープンソースとの親和性も重視されています 。

3.3 ERPやミドルウェア、アプリケーション

ERP(企業資源計画)、CRM(顧客関係管理)、HCM(人事管理)などを含むビジネスアプリケーション、さらにFusion MiddlewareやJava、Oracle Linuxなど、多岐に渡る製品ポートフォリオを保有しています 。

4. クラウド事業とAI戦略

4.1 インフラ戦略とAI対応:Stargateプロジェクト

Oracleは近年、AIとクラウドインフラを軸に積極投資を進めています。Stargateプロジェクトでは、OpenAIおよびソフトバンクと提携し、AI向けデータセンターを構築。OracleのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)売上が強く伸びており、OCIは業界をリードする成長率を記録しています 。

また、スティーフル(Stifel)の分析では、Oracleのクラウド収益が2027年度に465億ドルに達し、全業績の成長を担う見通しであるとされています 。

4.2 高成長率と注文残高(RPO)

直近の決算によれば、クラウドインフラ部門の成長率は50〜70%にも達し、注文残高(RPO:Remaining Performance Obligations)は急増中です。特にStifelは、RPOが41%増加していると指摘し、高い需要を示しています。

4.3 フルスタック戦略とマルチ/ハイブリッドクラウド路線

Oracleは、「フルスタック」で戦える数少ないクラウド事業者として、自社ハード+ソフトを深く統合した戦略を取っています。オンプレミスからOCIに至る幅広い選択肢を提供することで、企業にとって「選びやすく、移行もしやすい」インフラを実現しています。

さらに、マルチクラウドに配慮した互換性や他社との共存にもこだわっており、競合との差別化となっています。

4.4 データベースとの統合とエンタープライズポートフォリオ

OCIとOracle Database、SaaSアプリケーション(FusionやNetSuite)を統合し、一括提供できる点も強みです。特にデータベースを起点にしたAIやアプリ層の連携は、他社にはない付加価値を提供します。


5. 買収戦略の詳細と成果

5.1 買収戦略の全体像

Oracleは「製品強化」「イノベーション加速」「市場拡大」の観点で買収を活用しています。顧客対応・財務目標・株主価値の創造を念頭に据えたM&A戦略が特徴です。2025年1月時点で150件以上の買収を達成しており、Cerner(医療)、PeopleSoft、Sun Microsystems(Java/OS)、NetSuite(ERP)、Hyperion(BI)などが含まれます。

5.2 NetSuite:中小企業向けクラウドERPの主力

2016年に約93億ドルで買収したNetSuiteは、中堅・中小企業(SMB)向けクラウドERPのリーダー。OracleにおけるERP戦略を「中〜大企業向けFusion Cloud ERP」と「SMB向けNetSuite」で二階建てにしたことで、SAPやMicrosoftへの明確な差別化を実現しています。

買収後の成長も著しく、収益は2016年の約0.9Bドルから2023年には2.8Bドル近くに拡大。ERP市場でSAPを抜いてトップシェアとなりました。

NetSuiteは独自のブランドとして存続しつつ、OCIやAutonomous Databaseへの移行が進み、Oracleのインフラ消費を牽引しています。

5.3 その他の買収例

  • Cerner(約283億ドル、2022年):医療情報システムを獲得。ヘルスケアクラウドへの展開を強化。
  • Taleo(約19億ドル、2012年):人材管理SaaSを補完。
  • BigMachines(2013年):CPQ(見積・価格設定)SaaS → Oracle CPQに統合。
  • DataFox, goBalto, Dyn, DataScience.com など(近年):データ分析・サイバーセキュリティ・API開発・サイエンス基盤強化に寄与。

6. 戦略的価値と今後の展望

6.1 買収によるクラウド戦略とのシナジー

NetSuiteを筆頭に、Oracleは買収した製品をただ取り込むだけでなく、インフラ(OCI)やデータベース、AIとの深い連携によって独自の「システムエコシステム」を築いています。これがOracleのクラウド差別化要素となっています。

6.2 AI・インフラの投資と将来展望

Stifelやその他アナリストは今後数年間、Oracleのクラウド収益が高い成長を維持し、AIインフラ需要がさらなる拡大を促すと予測しています。また、TikTokの米国ホスティングやOpenAIとの関係など、Oracleにとって新たな収益基盤となる可能性も注目されています。

6.3 財務的リスクと懐疑的な見方

一方で、巨額の設備投資(2026年に250億ドル見通し)や負債の増加に伴い、フリーキャッシュフローや財務健全性への懸念も指摘されています。


まとめ表:クラウド競争力 × 買収戦略

要素内容
インフラ戦略Stargateプロジェクト/AIデータセンター整備/OCI高速成長
フルスタック提供ハード+ソフト統合/オンプレ~クラウド/マルチクラウド対応
ERP戦略Fusion + NetSuiteによるカバレッジの二層構造
買収活用SaaS強化(Taleo, BigMachines)/医療・ERPなどのドメイン拡張
将来への布石OpenAI・TikTokとの協業/高成長予想

7. 財務・市場評価・展望

  • 株価・成長
    Oracleの株は過去数十年で驚異的な成長を遂げており、AIやクラウドへの対応がその追い風になっています。
  • 将来展望
    分析レポートでは、AI+クラウドによってOracleが1兆ドル企業になる可能性が示されており、今後も戦略の実行力が注目されます。

8. まとめと今後への展望

Oracleは創業以来、強力なRDBMS基盤を軸にクラウドやAIへと果敢に進化してきました。最新の「23ai」リリースはその象徴であり、AI時代に対応した最先端機能を搭載。クラウド、アプリケーション、買収による多角化、そして財務面での堅実な成長が、同社を今もテクノロジー業界の重要な存在にしています。

今後も、企業向けAI・インフラ市場での存在感をさらに高め続ける可能性が高く、「Oracleとは?」という問いへの回答は、ますます強固になっています。